「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」津川雄介(つがわゆうすけ)著
第1章に続いて、今回は第2章を解説します。毎日の「何を食べようか」の選択に、少しでも健康に近づく食事の正解を知りたい人には必見です。結局なにが体に良いのでしょうか?今、あなたが信じている健康情報は本当に正しいですか?と問われています。
「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」津川雄介(つがわゆうすけ)著
津川雄介(つがわゆうすけ)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)内科学助教授。東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。共著書に「週刊ダイヤモンド」2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた「原因と結果の経済学:データーから真実を見抜く思考法」(ダイヤモンド社)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。
体に良いという科学的根拠がある食べ物

オリーブオイルやナッツは脳卒中やがんのリスクを下げる
(本文を引用、解説しています)
日本食が体に良いと思っている人は多いだろう。実は日本食が健康に良いというエビデンス(科学的根拠)は弱い。
日本食は赤い肉やバターなどの体に悪い油をあまり含まないという点では健康的かもしれないが、一方で、塩分と白い炭水化物の量は欧米の食事よりもかなり多い。
世界には数多くの食文化があるが、健康に良いという地位が最も確率しているのが、「地中海食」なのである。そして、地中海食の中心となるのが、オリーブオイル、ナッツ類、魚などである。
地中海食の大規模研究

事実
2013年世界で最も権威のある医学雑誌の1つである「ニューイングランドジャーナル」誌に地中海食の検証を目的としたランダム化比較試験の研究結果が掲載された。
研究
これはスペインで実施された他施設共同研究であり、約7500名の糖尿病や喫煙歴があるものの心筋梗塞などの病気を起こしたことのないひとたちが、ランダムに3つのグループに割り付けられた。
研究内容
① 1つ目のグループは地中海食を食べるように指導され、さらに1週間ごとに約1リットルのエクストラバージンオリーブオイルが支給された。(地中海食+オリーブオイル)
② 2つ目のグループは同時に地中海食を食べえるように指導され、1日あたり30gのミックスナッツ(クルミ15g、ヘーゼルナッツ7.5g、アーモンド7.5g)が支給された。(地中海食+ナッツ類)
③ 3つ目のグループは地中海食の代わりに、低脂肪食の指導を指導を受けた。総摂取カロリーや運動に関しては特に制限はされなかった。(低脂肪食)
追跡調査
研究対象者は5年間追跡され、動脈硬化によるイベント(心筋梗塞、脳卒中、そしてそれらによる死亡)が起こるか評価された。
①②③グループの相違点
①と②の地中海食の栄養指導を受けたグループは③の対象群と比べて、魚の摂取量が1日あたり5~6gほど多く、豆類の摂取量も3~5g多かった。
①のエクストラバージンオリーブオイルに割り付けられたグループは1日あたり50g多くオリーブオイルを摂取。
②のナッツ類に割り付けられたグループは25gのナッツを摂取していた。
地中海食は脳卒中、心筋梗塞を減らす

研究結果
- ①②の地中海食を受けたグループは、③と比べて、脳卒中、心筋梗塞、そしてそれらによって死亡する確率が29%低かった。
- ① 地中海食+オリーブオイル・・・グループで30%
- ② 地中海食+ナッツ類・・・グループで28%
のリスク減少が認められた。
さらに、同じデーターを用いた別の論文では、地中海食は乳がんになる確率を57%減少させることも明らかになっている。
ここでの地中海食の栄養指導とは
積極的に摂取することが推奨される食品
- オリーブオイル・・・大さじ4/日以上
- ナッツ類・・・90g/週以上
- 生の果物(加工品は含まない)・・・3単位/日以上(果物1単位とは、バナナなら1/2本、リンゴ・オレンジなら小1個くらい)
- 野菜(加工品は含まない)・・・2単位/日以上(野菜1単位とは、葉野菜なら小皿1杯、調理済み野菜なら小皿1/2くらい)
- 魚(特に油ののった魚)、海産物・・・170g~260g/週以上
- 豆類・・・小皿3/4杯/週以上
- 赤い肉(牛肉や豚肉)を白い肉(鶏肉)に置き換える
摂取しないことが推奨される食品
- 炭酸飲料(果糖飲料)・・・コップ1杯(200cc)/日未満
- 甘いもの(ケーキ、クッキー、甘いパンなど)・・・小サイズ3個/週未満
- バターやマーガリンなどのスプレッド・・・小さじ1杯/日未満
- 赤い肉(牛肉や豚肉)や加工肉(ハムやソーセージなど)・・・85g/日未満
地中海食はがんや糖尿病も減らす
フランスのリヨンで行われた研究では、バターやクリームを、αリノレン酸を豊富に含む特殊な油と置き換えることで、心筋梗塞の再発を50~70%予防することができた。
また、地中海食は糖尿病になるリスクを30%下げることも他の研究によって報告されている。
2016年に米国内科学会誌に掲載されためたアナリシスによると、上記のような発見に加えて、地中海食を食べ続けた人は、そうでない人たちに比べて、がんによる死亡率が14%低く、大腸がんになるリスクが9%低いと報告された。
地中海食=オリーブオイル+ナッツ類+魚+野菜・果物
ここまで読めば、地中海食が体に良いということが、いかに科学的に支持されているかわかってもらえたことと思う。
さらには、地中海食の研究で実際にどのような食事が食べられているのかを理解すれば、フムスやひよこ豆のスープのような凝った地中海食を食べる必要はなく、
オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜、果物を豊富に食事に取り入れ、赤い肉を避けるということが、いわゆる「地中海食」に近いことがわかる。
つまり、地中海食のレシピ本を買う必要も、インターネットで地中海食を検索する必要もない。
この5つの食品を普段の食事に取り入れ、3つの健康に悪い食品を避ければ、地中海食を食べているのと同様の健康効果が得られると考えられる。
普段どおりの食事をしながら、塩分と白い炭水化物の摂取量を減らす代わりに、オリーブオイル、ナッツ類、魚、野菜、果物を増やすことが最も健康に良い食事であると言って良いだろう。
チョコレートは薬か毒か?

最近にほんではチョコレートの人気が上昇している。以前まではデパートなどでしか売っていなかったダークチョコレートが、今ではコンビニでも買えるようになった。この現象の一因に、チョコレートは健康に良いというイメージがあるだろう。これは欧米でも同様で、チョコレート、特にダークチョコレートは「健康的なお菓子」という印象がある。
では実際に研究ではどこまでわかっているのだろうか。
そもそもなぜチョコレートに健康効果があると考えられるようになったのだろうか。
実は、それには中米の国であるパナマが関係している。パナマのサンプラス諸島に住む先住民族であるクナ族は、すりつぶしたカカオの実にトウモロコシを混ぜた飲み物を1日10杯ほど飲む習慣があった。
1940年代にハーバードの研究者らが、島に住むクナ族と、都会のパナマシティで現代的な食生活をしているクナ族出身者を比較した。
島に住む原住民の方が、血圧が低く、心臓病などの発生率も低いことが明らかになった。これが、チョコレートの健康効果が注目されるようになったきっかけであるといわれている。
チョコレートは血圧を下げる
チョコレートに関してよくわかっているのは、高血圧の患者の血圧を下げる作用があるということである。これは、ランダム化比較試験を含む、複数の研究結果によって認められており、科学的に示唆されている。
さらには、血圧に対する作用に比べると、エビデンスは弱いものの、チョコレートには以下のような健康に対する影響も観察研究より示唆されている。
- 心筋梗塞などによる死亡率を下げる。
- インスリンが効きにくく血糖値が上がってしまう病態(インスリン抵抗性と呼ぶ)を改善する。
- アルツハイマー病の発生率を下げる。
- 脳卒中のリスクを下げる。(日本人のデーターを用いた研究)
この注意点
チョコレートの血圧に対する効果は、ランダム化比較試験でも実証されておりほぼ確実であると言っても良い。
それと比べると、ここに示したような、死亡率やアルツハイマーに対する効果は観察研究のデーターしかなく、あくまで「可能性が示唆されている」というレベルであり、今後の研究結果が待たれている。
含まれる砂糖の量に注意
これらの研究の多くはチョコレートそのものの摂取量を見ているわけではなく、チョコレートに含まれるポリフェノールの1種であるフラボノイドやカカオニブ由来の食物繊維の効果を見ているものも多い。
チョコレートには体に良い成分もあり、体に悪い砂糖も多く含まれているため、この2つのバランスによっては健康にとってマイナスの影響があることもある。
実際に、ダークチョコレートとホワイトチョコレートを比較してみると、健康への影響が違ったという研究結果もある。「より色が黒い」ことが必ずしもダークチョコレートであることを意味しないことにも注意が必要である。
例えば、チョコレートの製造過程において、カカオの苦味をとるために炭酸カリウムが加えられるが、これは、チョコレートの色をより黒くする効果もある。
「ダークチョコレート」かどうかは、見た目の色で判断するのではなく、含まれるココアパウダーや砂糖の量で見分ける必要がある。
パッケージに「カカオ〇%」という記載があれば、その割合が高いものを選べば安心だろう。ちなみに、チョコレートの仲間である「ココア」でも同様の健康効果が期待できる。
チョコレートもココアも原料は同じカカオ豆だ。カカオ豆を焙煎、圧搾して作られるカカオマスから、脂肪分であるカカオバターを取り除いたものがココアである。
カカオマスにカカオバター、ミルク、砂糖を加えたものがチョコレートである。チョコレートとココアは本質的に近いので、ココアも血圧を下げるといった健康にプラスの効果があると考えられる。
食後などに少し甘いものが食べたいと口さみしくなる人にとっては、含まれる砂糖の量が少ない「ダークチョコレート」は最適のデザートであると言っても良いだろう。
果物は糖尿病を予防するが、フルーツジュースは糖尿病のリスクを上げる

オリーブオイルやナッツと同じくらい健康にとってメリットがあるのが、野菜や果物である。ここで重要なのは、果物や野菜のジュースやピューレなどの加工品ではダメだということ。
野菜は生野菜でも、ゆで野菜、野菜スープでも構わない。1回冷凍した果物を解凍しても、それほど大きな変化はないだろう。しかし、加工品になると話は変わってくる。加工の過程で、健康上のメリットが失われていると考えられるからである。
野菜・果物は心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らす
16の研究結果をまとめたメタアナリストによると、1日の果物の摂取量が1単位(バナナなら1/2本、リンゴなら小玉1つ)増えることに、全死亡率(原因にかかわらず死亡する確率)は6%減り、野菜の摂取量が1単位(小皿1杯)増えると死亡率は5%減るとされている。
野菜や果物は食べれば食べるほど死亡率は減るものの、1日の摂取量が5単位(約385~400g)を超えると、それ以上摂取量が増えても死亡率は変わらなくなる。つまり、1日5単位くらい食べれば健康上のメリットは充分であるといっても良いと考えられている。
食生活が健康にプラスの影響を与えるにはそれなりに時間がかかるため、もっと大規模で長時間にわたって追跡調査したランダム化比較試験が出てくるまでは、結論づけることはできないが、
少なくとも観察研究のデーターからは野菜や果物は心筋梗塞や脳卒中を予防する可能性は高いと考えておいても良いだろう。
野菜や果物を食べるとがんは減るのだろうか。
実はがんの予防効果はあまり期待できない。
食道がんに関してはリスクが下がる可能性が示唆されているが、あまり強くないエビデンスなので注意が必要である。(喫煙や飲酒の影響が充分に対処されていない研究である)
肺がん、胃がん、大腸がん、乳がんなどに関しても野菜や果物の摂取をの間に関係はないと考えられている。前述のメタアナリシスでも、野菜や果物の摂取と、がんによる死亡との間には統計的に有意な関係は認められなかった。
「フルーツジュース」は糖尿病のリスクを上げる
2013年に、当時はハーバード公衆衛生大学院の研究院であった村木功氏(現在の所属は大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室)によって発表された英国医師会雑誌に掲載された大規模な観察研究の論文によって、
果物をとっている人はど糖尿病のリスクが低いことが明らかになっている。この論文で興味深いのは、果物の種類によって、糖尿病の予防効果が、異なってくるをいうことである。
果物の中でも、ブルーベリーやブドウを食べる人ほど特に糖尿病のリスクが低いこと、がわかっている。多くの果物は糖尿病のリスクを下げるが、カンタロープメロン(赤肉種のマスクメロン)は逆に糖尿病のリスクを上げることもわかった。
血糖値にどのような影響を与えるかを見ても、多くの果物は血糖値をほとんど上げないものの、メロンは血糖値を上げることがわかっている。血糖値に注意しないといけない人はメロンは避けた方がよさそうである。
さらに興味深いことは、フルーツジュースを多く飲んでいる人ほど逆に糖尿病のリスクが高いことがわかった。1週間あたり3単位(コップ3杯分)のフルーツジュースを摂取している人は、糖尿病のリスクが8%高かった。
つまり、果物を食べている人ほど糖尿病のリスクが低い。それを抽出したものであるフルーツジュースをたくさん飲んでいる人ほど糖尿病のリスクが高い。逆効果であるということがわかったのである。
2015年に、英国医師会雑誌に掲載された、英国ケンブリッジ大学の今村文昭氏らがおこなった観察研究のメタアナリシスによると、フルーツジュースの摂取量が1日あたり1単位多い人ほど、糖尿病のリスクが7%高くなると報告されている。
コーラーなどの、いわゆる果糖飲料と比べると影響は小さいものの、フルーツジュースも糖尿病のリスクを上げることは覚えておいて損はないだろう。
フルーツジュースはできるだけ避ける
なぜ果物は糖尿病のリスクを下げるのに、フルーツジュースは上げるのか。
果物を食べれば血糖値を上げる果糖が含まれている、ものの、同時に血糖値の上昇を抑えてくれる食物繊維も摂っていることになる。フルーツジュースは水溶性の食物繊維は含まれるが、不溶性の食物繊維の多くは加工工程で取り除かれてしまうと考えられている。
では、糖分と食物繊維のサプリメントを一緒にとれば良いのかというとそうでもない。多くの専門家は食物繊維はサプリメントでとるよりも食事でとった方が良いを考えている。
やはり、成分で考えるのではなく、食品まるごとで考えることが、健康的な食事をするためには重要だということだろう。健康を維持したいのであれば、果物はたくさんとり、フルーツジュースはできるだけ避けることをおすすめする。
野菜ジュースより野菜を食べよう

それでは、野菜ジュースはどうだろうか。
野菜ジュースに関してはエビデンスがないのでわからないというのが実情である。成分表示のラベルを見て、ピューレや濃縮還元と書いてあれば、野菜と同じような健康上のメリットは期待できないだろう。それ以外のものでも、野菜ジュースが健康に良い影響があるというエビデンスはない。
野菜ジュースを加工する段階で、水溶性の食物繊維の多くは取り除かれてしまっている。健康のことを考えているのであれば、野菜ジュースではなく、加工されていない野菜を積極的に摂取するほうが良いだろう。
フルーツジュースや野菜ジュースで、果物や野菜を食べた気になってしまうのは危険である。「ジュース」ではなく、「加工されていない果物や野菜」を摂取するように心がけてほしい。
オーガニック食材は健康に良いのか?
欧米ではオーガニック食材が年々人気になってきている。
オーガニック食材の日本国内の市場規模は約1300億円とされ、3兆円規模の米国や1兆円規模のドイツなどの欧米と比べて、まだ小さいものの、日本でも健康志向の高まりなどでニーズは大きくなってきている。
オーガニック食材とは、いわゆる有機栽培によって生産された食材のこと。
国によって「オーガニック」と名乗るための条件は若干異なるものの、オーガニックとは一般的には、農作物に関しては化学肥料や化学農薬を使わないもの、家畜に関しては抗生剤や成長ホルモンをできるだけ使わない方法で作られたもののことを指す。
有機農作物と有機農作物加工品を「オーガニック」として表示。販売する場合には、生産者や加工業者は、登録認定機関の調査・認定を受け、有機JASマークをつけることが義務づけられている。
リスクもあるオーガニック食材
オーガニック食材は一般の食材よりも高価であるが、栄養価が高く、より安全である、という印象を多くの人が持っていると報告されている。
その一方で、有機肥料はしばしば、発酵させた家畜の糞便を用いるため、オーガニック食材だと食中毒を起こしたり、寄生虫に感染するリスクが高い、と警鐘を鳴らす専門家もいる。
本当のところはどうなのだろうか?
2012年に、スタンフォード大学の研究者たちが、オーガニック食材の健康への影響に関するエビデンスをまとめて総説論文として発表した。彼らは人間を対象とした17個の研究と、食材を調査した223個の研究をまとめ、以下のような結論に至った。
オーガニック食材は一般の食材と比べて、栄養価は変わらない。
微量(ぎりぎり検出可能なレベル)の残量農薬を認める確率はオーガニック食材の方が低い。(オーガニック食材の7%、一般食材の38%で微量な残留農薬が認められた)しかし、通常の成人であれば、一般食材から摂取される残留農薬の量は許容摂取量よりも低く、健康被害を起こすレベルではないと考えられる。
病原性大腸菌に汚染されている確率はオーガニック食材と一般食材で差がない。(オーガニック食材の7%、一般食材の6%で汚染が確認された)冬場にオーガニックの肉を摂取することで、カンピロバクターによる食中毒にかかるリスクが約7倍になる。
まとめると、
- オーガニック食材は一般食材と比べて、
- ① 栄養価は変わらない
- ② 残留農薬は若干少ない(しかし、一般食材でも農薬の量は許容範囲内)
- ③ 冬場の肉に関しては食中毒を起こすリスクが高い
- とまとめることができる。
2016年には、欧州議会によって招集された調査チームによって、オーガニック食材が人間の健康にどのようなメリットがあるか研究されたが、ほぼ同じの結果が得られた。
過剰に反応する必要はない
一般の人にとってはオーガニック食材でなくても健康という観点からは問題ないと考えられている。オーガニック食材にするメリットがある可能性があるのが、妊娠中や妊娠する可能性のある女性と小さな子どもだろう。
非常に弱いエビデンスであるものの、妊娠中に殺虫剤を多く摂取することで、生まれてくる子どものIQが低くなったり、ADHD(注意欠陥多動性障害)になるリスクが高くなる可能性があることが報告されている。
また、2歳以下の小児に関しては乳製品をオーガニックにすることでアトピー性皮膚炎になるリスクが下がる可能性があるという報告もある。もちろん、これはあくまで可能性があるというだけで強いエビデンスとは言えないため、過剰に反応しないでほしい。
百歩譲って、残留農薬が気になるとしても、口にする食品を全てオーガニックにする必要はないだろう。そもそも食品の種類によって残留農薬の量は大きく異なるからである。
EWG(Environmental Working Group)と呼ばれるNPOが食品ごとの残留農薬の量を測定し、ホームページ上で公表している。オーガニックや一般の使いわけをしたほうが賢明だろう。
ちなみに、この調査では、野菜や果物を洗ったり、皮をむいてから農薬の量を測定しているため、リンゴやモモなどの皮をむいて食べる食材でも、内部にまだ農薬が残っていることを示唆している。
注意!
この調査は毎年実施されており、年によって結果は異なること、そしてアメリカで行われている調査であるため、他の国からの輸入品や日本国内産の野菜や果物にはそのまま適用できないことには、注意が必要である。
魚は心筋梗塞や乳がんのリスクを下げる

魚が体に良いというのは別に目新しい情報ではないが、魚がどのように健康に良いのか、どこまでわかっているのかきちんと理解している人は少ないのではないだろうか。
魚を食べていれば長生きできるのだろうか?心筋梗塞やがんを減らす効果はあるのだろうか?水銀など有害物質が含まれているので食べすぎは、逆に体に悪いのではないだろうか?
ここではこういった素朴な質問に答えていきたいと思う。
魚を食べていたら長生きできるのか?
2016年に、欧州の権威ある栄養学の雑誌に12個の観察研究(合計67万人)のデーターを統合したメタアナリシスの結果が掲載された。その結果、魚の摂取量が多い人ほど死亡するリスクが低いことが明らかとなった。
では、どれくらい食べれば良いのだろうか。食べたら食べるだけ健康になるわけではなく、ある程度摂取するとそれ以上食べても健康上のメリットはなくなると考えられる。
1日60gの魚を食べると、それ以上食べてもプラスアルファのメリットは少ないと考えられる。1日60gの魚を食べていた人は、魚を全く食べない人と比べて12%死亡率が低かった。
ちなみに、このメタアナリシスに含まれた研究の中には、日本人を対象をした観察研究も2つあり、両方とも魚の摂取量が多いほど死亡率が低いという結果が得られている。
魚の摂取は心筋梗塞のリスクを下げる
複数の研究を統合したメタアナリシスによると、1日あたり85~170gの魚(特に油の多い魚)を摂取すると(ほとんど魚を食べない人と比べて)心筋梗塞により死亡するリスクが36%低下することが明らかになった。
1993年~1995年、イタリアの研究者らが行った研究によると、過去3か月以内に心筋梗塞を起こした男女およそ1万人を、1日1gのオメガ3脂肪酸を服用するグループとしないグループに無作為に割り付け、その後3~5年間追跡lした。その結果、オメガ3脂肪酸を服用したグループでは死亡率が14%低かった。
これ以外にもいくつかのランダム化比較試験があるが、いずれもオメガ3脂肪酸の摂取は、心筋梗塞など動脈硬化による病気の再発を予防してくれるという傾向を示している。
ちなみに、日本人を対象としたランダム化比較試験もあり、EPA(エイコサペンタエン酸)と呼ばれる、青魚に多く含まれた不飽和脂肪酸を飲んだグループは、飲まなかったグループと比べて、心筋梗塞やそれによる死亡のリスクが19%低いという結果が得られた。
魚の摂取はがんを予防するのか?
魚をたくさん食べるとがんになるリスクも下がる可能性も示唆されている。
21個の観察研究を統合したメタアナリシスによると、魚をたくさん食べると乳がんのリスクが下がることがわかっている。具体的には、オメガ3脂肪酸換算で、1日0.1g摂取すると、乳がんになるリスクが5%下がると報告されている。
こちらに関しても、量を食べれば食べるだけ、量を比例してリスクが下がり続けるというわけではなく、ゼロから少しだけ食べる(オメガ3脂肪酸で0.1g/日)ときに1番リスクが下がるので、少量でも良いので、毎週コツコツと魚を食べるのが良いだろう。
この他にも、魚の摂取は、大腸がんや肺がんのリスクを下げることが報告されている。
魚には水銀などが含まれているから食べ過ぎない方が良い?
魚には、水銀、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ダイオキシンなどの有害物質も含まれていると言われている。
水銀は多量に摂取すると、子どもや胎児の脳の発達に悪影響があるといわれているものの、少量の摂取がどのような悪影響を及ぼすのかにかんしてはまだわかっていない。
PCBやダイオキシンの健康に対する作用に関してもわかっていないことが多い。しかし、これらの有害物質が含まれていることが心配だから、魚をひかえるというのは得策ではないようだ。
2006年に行われた研究の推定によると、もし10万人の人が70年にわたって週2回、さけを食べ続けたとすると、PCBによって生じるがんによって24名の命が奪われる一方で、心臓病のリスクを下げることで7000人の命が助かるとされている。
さらには、PCBなどの有害物質は、肉、牛乳、卵にも含まれており、魚だけに多く含まれているわけではない。
牛乳やヨーグルトは体に良いのか?

ハーバード公衆衛生大学院のホームページでは、栄養を専門とする研究者たちの、健康的な食事に関するアドバイスが掲載されている。
これが興味深いのは、専門家が推奨する食事と、アメリカ合衆国農務省(日本の農林水産省に相当する)が推奨する食事とが大きく異なるということである。
このホームページでは、アメリカ農務省の推奨する食事は、農協や酪農業者などのロビイングによって歪められているため、必ずしも科学的にもとづいたものではないという不満が遠回しに書かれているのだ。
牛乳やヨーグルトなどの乳製品もその1つである。アメリカ農務省の推奨では、食事ごとに乳製品を摂取するようにとされているが、ハーバードの研究者によると、この推奨は科学的根拠に裏付けられたものではないという。
彼らは、1日あたり1~2単位(牛乳だとコップ1~2杯、ヨーグルトだと170~450g)を上限(これは推奨量ではなく「上限」であることに注意が必要)とするようにアドバイスしており、
その理由として、乳製品の摂りすぎは前立腺がんや卵巣がんのリスクを上げる可能性が、過去の研究より示唆されている、からであるとしている。
大人は乳製品の摂取を控えめに
日本でも、色々な省庁で健康的な食事に関する情報が開示されているが、それらも関連業界の政治的なロビイングの影響を受けている可能性があることを理解しておく必要がある。
ここでは紹介していないが、ヨーグルトの摂取量が多い人ほど、糖尿病の発生率が低くなる可能性を示唆している論文も複数あり、乳製品がひとえに体にとって悪いとは言えない。
さらには、成長期の子どもや中学生などでは、たんぱく質を摂取するという観点から、乳製品を積極的に摂取するのが良いという考え方もある。
しかし、乳製品の摂取量が多くなりすぎると前立腺がんや卵巣がんのリスクが上がる可能性があることが示されているため、大人に関しては、乳製品の摂取量はほどほどにすることが望ましいだろう。
まとめ
今までの食に対する疑問点がすべて書かれています。科学的根拠、エビデンスにしたがって得られた答えなので、信頼性があります。日頃から考えていたこともこれで考えがまとまりました。良い本を読むことは、自分にとって良いことです。健康維持に、生活習慣病の予防と改善にもお役に立てば幸いです。
最後までお読み頂きありがとうございます。
コメント