眠っている脳はリハビリによって目覚める!

音楽02

脳活性化リハビリテーションは、眠っている脳を目覚めさせます。人は、脳細胞の3分の2は使われていないまま終わると言われています。見る、聞く、嗅ぐ、触れる、味わうの五感を使うリハビリをし、眠っている細胞を目覚めさせ、なくなった細胞をカバーしていきます。認知症の人の自信を取り戻し、生活の質を高めるのが目標です。

川崎幸クリニック院長 杉山孝博 監修

1973年、東京大学医学部卒。東京大学医学部付属病院で内科研修後、地域医療に取り組むために川崎幸病院(神奈川県川崎市)に勤務。1981年、「呆け老人をかかえる家族の会(現・認知症の人と家族の会)・神奈川県支部」の発足当初から会の活動に参加。現在、(社)認知症の人と家族の会副代表理事、神奈川県支部代表。往診・訪問看護を中心にした在宅ケアに取り組み、「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」「上手な介護の12か条」を考案、普及。NPO法人全国認知症グループホーム協会顧問や、厚生労働省関係委員としても活躍中。主な著書・監修書に「杉山孝博Dr.の認知症の理解と援助」(クリエイツかもがわ)「ぼけー受け止め方・支え方」(家の光協会)「痴呆症老人の地域ケア」(医学書院)「認知症・アルツハイマー病、介護・ケアに役立つ実例集」(主婦の友社)などがある。

(解説、引用しています)

【リハビリ治療】脳活性化リハビリテーションは、眠っていた脳を目覚めさせます

見る、聞く、触れる、などの5感を使うリハビリは、まだ使われていない神経細胞を活発にして、脳の働きを高めます。ストレスにならないよう、楽しみながらやることがポイントです。

脳細胞を活性化させ、生活の質を高める効果も

認知症の治療は、薬物療法とあわせて脳を活性化させるリハビリを行うと、いっそう効果が上がることが認められています。

薬は病気のためにアンバランスになっている脳内物質(アセチルコリン)の、バランスを取り戻すように作用します。脳の神経細胞が動きやすいように、環境を整えるわけです。しかし、死滅してしまって細胞まで、生き返らせることはできません。

それでも脳には、まだ使われずに眠っている細胞がたくさん残っています。人は、持っている神経細胞の3分の2は使わないまま終わると言われているのです。

そこで「見る、聞く、嗅ぐ、触れる、味わう」の5感を使うリハビリをし、眠っている細胞を目覚めさせて、なくなった細胞のかわりができるようにするわけです。

認知症の人は、脳の機能が衰えているため、生活の様々な場面で不自由をかかえ、自信をなくしています。リハビリは、そういった人たちの生活の質(QOL)を高める「生活改善プログラム」の意味もあります。

脳活性化リハビリとは、何かが出来るようになる(失われたものを回復する)こと以上に、患者さんや家族の人生(生活)を、より良いものにしていくためのものだともいえます。

デイサービスや病院などで行われているメニューの中から、いくつかを紹介します。

回想法

懐かしい思い出

回想法は、米国で始まった心理療法です。認知症への効果が注目され、日本でも行うところが増えてきています。施設や病院でよく行われるのは、グループ回想法です。

過去を思い出し、語り合う

子どもの頃の遊び、お祭り、昔使っていた生活用具など、共通する話題を選びグループで語り合います。懐かしい昔を思い出し、それについて語ることで脳が刺激されます。また、楽しかった過去に戻ることで、1時的ではあっても障害の不安や混乱から解放されます。

グループ回想法は、精神科医や臨床心理士、作業療法士などが指導をし、まとめます。

自宅でもできる

回想法には、個人回想法というのもあり、これは家庭でもできます。

認知症のお年寄りには、出来るだけ多く、幼い頃のことや、若い時のことを話してもらう機会を作ってあげましょう。昔の写真、かつて流行した歌、お手玉やベーゴマなどの玩具などがあると、思い出しやすくなります。家族で楽しい時間を共有することで、心が癒されます。

音楽療法

音楽

音楽療法は、認知症の人には高い効果がある療法として知られています。多くの施設で行われていますが、ほとんどは、参加者みなが一緒に歌を合唱したり、簡単な楽器を使って合奏するメニューが中心です。

音楽療法士が指導する場合もあります。音楽療法士は、本人の成育歴や音楽歴をもとに思い出の曲を盛り込んだプログラムを作成するので、記憶が掘り起こされ、人生を再確認する、といった効果も期待できます。

音楽演奏の効果

音による耳からの刺激、楽器を持った時に手から伝わる刺激、太鼓など打楽器を打った時に感じる空気の振動、音楽演奏は、5感を通じて心身によい影響を与えます。

また、即興演奏は、右脳を活発にする効果があります。さらに、自分にも楽器が演奏できる、自己実現できるという満足感も、見逃せない効果です。

歌を歌う効果

歌を歌うことは、誰にでも簡単にできて、情緒面によい働きかけをします。

軽度の認知症の人にとって、初めての歌は良い刺激になるようです。一方、昔から知っている歌を歌うと、記憶を呼び起こす効果も期待できます。

外部からの刺激に反応しなくなって久しい認知症の人が、懐かしい歌に反応を示すケースは、多くの音楽療法士が経験しています。

また、歌を歌うことは、身体面にも良い影響を与えます。歌うときに腹筋を使うことで、代謝を活発にし、筋力エネルギーを増やし、呼吸を促進したり、血液量や心拍数、血圧などへの効果も期待できます。

*音楽の刺激は、あまり強すぎると、認知症の人を疲労させることにもなります。長時間にわたらないように注意をする必要があります。

美術療法(臨床美術)

絵を描く

美術療法は、絵画などのアート作品を制作することで、神経細胞を刺激し活性化する療法です。

音楽療法ほど普及していませんが、この療法を行っている施設の調査では、「知能の低下の進行が抑えられる」「心がおだやかになる」「意欲が高まる」「集中力が改善する」といった効果が見られると報告されています。

絵を描くプロセスが脳を活性化

アルツハイマー型認知症になると、物の形や空間を認識することが困難になります。一方、絵画を描くことは「立体」の対象物を認識し「平面」に書き写す知的作業ですから、そのプロセスそのものが脳のリハビリとなります。

美実療法は、臨床美術士がカリキュラムをつくって指導します。認知症の人は、描く対象に触ったり、においをかいだりします。食べ物のときは、食べ方について参加者同士で話し合ったり、実際に食べてみることもあります。

そして、この香りを色で表現すると何色になるか、おいしさを絵で描くとどんな形になるか、というふうに、その人自身のイメージを膨らませていきます。1枚の絵を描くために、5感をフルに活用させ、イマジネーションを膨らませることは、認知症の人を生き生きと活気づけます。

家族と共通の話題が増える

臨床美術を行っている施設では、家族も参加するところが多いようです。一緒に絵を描いたり、臨床美術士から作品への講評を受けたりする中で、共通の話題が増えて、家族での会話もはずむようになるといいます。

アニマルセラピー

高齢者と動物

アニマルセラピーは、認知症の場合は特に、重度で意欲が低下している人に効果を現すと言われています。

動物に接して自分を取り戻す

普段は無表情で、コミュニケーションが上手くとれない認知症の人が、動物と触れ合うときだけは生き生きとした表情をします。

また、攻撃的で周囲に手を焼かせるような人でも、動物には優しく慈しむような愛情を示し、頭をなでたりします。何にも興味を見せず1日中ぼんやりしている人が、動物を見ると、何かあげるものがないかと探して世話を焼きたがります。

これらの人たちに共通して見られるのは、ごく自然な形で自分の役割を取り戻せたことへの、安心や自信の表情です。

認知症の人は、かなり重度で自分では何もできなくなっていても、心のどこかでは一方的に世話をされることにストレスをかんじています、しかし、動物が相手なら、保護者のようになって愛情を注ぐことができます。

アニマルセラピーは、認知症の人にとっては、自分の役割を感じ取れるケアになるのです。

飼うのは控えた方がよい

アニマルセラピーに、専門家の指導は特に必要ありません。動物は、存在そのものに癒しの効果があるからです。そこで、認知症の人に笑顔になってもらおうと、家でペットを飼おうと考える家族がいるかもしれません。

しかし、犬や猫の世話をするのは、結局のところ、介護者になってしまうことが多いのです。介護者の心身の負担はさらに大きくなりかねないため、あまりお勧めできません。

学習療法

高齢者と勉強

認知症の症状の多くは、脳の前頭前野の支配下にあります。

この前頭前野を、簡単な「読み・書き・計算」をして活性化するのが学習療法です。多くの施設が取り入れていますが、行うときは3つのポイントが大切です。

① 簡単にできる

計算は、次から次へと解ける簡単なものにすることです。本人が自信を持てるようにいないと逆効果です。

② 誰かと一緒に

1人で机に向かうのでは、長続きしません。一緒にやる人、話をしながらできる人が必要です。

③ 本人の意欲

無理やり「やらされる」のではなく、本人の「やろう」とする意欲が大切です。学習することが「面白い、楽しい」と感じられるように工夫しましょう。

介護者の声

家族04
義父を笑顔にした美術療法

義父は、認知症になってからといいうもの、すっかり気難しくなってしまいました。いったんヘソを曲げると、てこでも動こうとしません。

困るのは、デイサービスに行こうとしないこと。「あんな幼稚園みたいなところ」と、何かと理由をつけては逃げ回ります。

ところが、あるきっかけから喜んで通うようになりました。美術療法をはじめたのです。義父が描く絵は、色の具合などに衰えないセンスを感じさせ、先生からもよくほめられます。ただし、義父にとって一番うれしいのは、孫の言葉。持ち帰った作品を見せ「おじいちゃん、上手だね」と言われると、満面の笑顔になります。

まとめ

脳活性化リハビリテーションは、眠っていた脳を目覚めさせます。見る、聞く、触れる、嗅ぐ、味わう、という5感を使って、眠っている脳細胞を目覚めさせ、なくなった細胞のかわりができるようにするわけです。

認知症の人は、様々な場面で不自由を感じています。リハビリによって、自信を取り戻し、生活の質を高めていきます。「生活改善プログラム」の意味もあります。

脳活性化リハビリテーションの種類

  • 回想法
  • 音楽療法
  • 美術療法
  • アニマルセラピー
  • 学習療法

脳活性リハビリテーションとは、何かが出来るようになる(失われたものを回復する)こと以上に、本人や家族の人生を、よりよいものにしていくためのものだとも言えます。

デイサービスや病院、施設などで行われています。デイサービスや施設、病院などを探すときの目安にしても良いと思います。認知症の人、本人と家族の人生がよりよいものになりますように、参考になれば幸いです。

最後に

家族03

自宅でできる「回想法」

今、70歳~90歳代の高齢者は、幼い頃どのような遊びが流行っていたのでしょう。直接、家族で話し合っても楽しいです。喜んで教えてくれるかもしれません。

(回想=かいそう:かつて経験したことを思いめぐらすこと。過去のことをふりかえって思いおこすこと。「少年の日を回想する」)

70歳~90歳代の高齢者の年表

昭和25年 1950年  70歳 寅(とら)
昭和24年 1949年  71歳 丑(うし)
昭和23年 1948年  72歳 子(ね)
昭和22年 1947年  73歳 亥(い)
昭和21年 1946年  74歳 戌(いぬ)
昭和20年 1945年  75歳 酉(とり)
昭和19年 1944年  76歳 申(さる)
昭和18年 1943年  77歳 未(ひつじ)
昭和17年 1942年  78歳 午(うま)
昭和16年 1941年  79歳 巳(み)
昭和15年 1940年  80歳 辰(たつ)
昭和14年 1939年  81歳 卯(う)
昭和13年 1938年  82歳 寅(とら)
昭和12年 1937年  83歳 丑(うし)
昭和11年 1936年  84歳 子(ね)
昭和10年 1935年  85歳 亥(い)
昭和9年   1934年    86歳 戌(いぬ)
昭和8年   1933年    87歳 酉(とり)
昭和7年   1932年    88歳 申(さる)
昭和6年 1931年    89歳 未(ひつじ)
昭和5年   1930年    90歳 午(うま)
昭和4年 1929年    91歳 巳(み)
昭和3年 1928年    92歳 辰(たつ)
昭和2年 1927年    93歳 卯(う)
大正15年 (昭和元年) 1926年   94歳 寅(とら)
大正14年 1925年 95歳 丑(うし)
大正13年 1924年 96歳 子(ね)
大正12年 1923年 97歳 亥(い)
大正11年 1922年 98歳 戌(いぬ)
大正10年 1921年 99歳 酉(とり)
大正9年 1920年 100歳 申(さる) 

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