簡単にわかりやすい介護者のための認知症の基礎知識

読書

2025年には認知症の人は700万人、65歳以上の5人に1人が認知症になると推計されています。夫婦、親、親戚、兄弟、友人、あなた自身がなるかもしれません。認知症は脳の病気であり、その結果あり得ない行動が出現します。悩む本人の一歩先を歩けるように介護者のための基礎知識です。

【認知症の人がスッと落ち着く言葉かけ】(介護ライブラリー)

著者 右馬埜節子(うまの・せつこ)

1943年、岡山県生まれ。「認知症相談センターゆりの木」代表、株式会社日本エルダリーケアーサービス執行役員。1933年、中野区役所(東京都)の認知症専門相談員(非常勤)として介護の仕事に入り、2000年の介護保険制度施行と同時に民間事業所でケアマネジャーとして勤務を始める。2003年、自信が担当する認知症の人の居場所として、「デイホームゆりの木中野」を設立。その後、家族介護者の拠り所として「認知症相談センターゆりの木」を解説した。現在は「中野区地域連携型認知症疾患医療センター」の専門相談員を兼務するほか、研修・指導・講演にも携わっている。著書に「認知症の人がパッと笑顔になる言葉かけ」(講談社)がある。

(解説・引用しています)

参考までに 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン) 厚生労働省→

知っておくと納得する、認知症の医学的な基礎知識

監修・須貝祐一(浴風会病院)認知症専門医

認知症の概要

現代図書館

認知症は脳の病気です、断言します

かつては「遺伝する」「性格が原因で発病する」などと、根拠のない説が信じられていた時代もありましたが、医学の進歩によって原因や症状が明らかになってきました。

最近では認知症の前段階、すなわち病気とも言えず、かといって健全とも言い切れない状態を示して「軽度認知障害(MCI)」と呼ぶようになりました。

MCIの人は、この先の過ごし方によって認知症に進むか否かのどちらかに分かれます。
こうした予備軍も含めると「65歳以上の4人に1人」は認知症になると言われています。認知症は原因疾患によって分類され、その種類は、細かく分けると100種類ほどあると言われています。

お年寄りに起こるおもなものとしての「3大認知症」

  • アルツハイマー型認知症(約5割)
  • 脳血管性認知症(約2割)
  • レビー小体型認知症(約1割)
  • (その他2割は混合型や様々な原因疾患)

認知症になると脳の神経細胞が脱落し、さらに脳内の伝達物質に混乱や断絶が生じるため、見たり聞いたり、あるいは触れたり嗅いだりして得た外界の情報が体に正しく伝わらなくなります。

結果、記憶障害が起ったり、思考や行動が上手くいかなくなって日常生活に支障が出てきます。それがだんだん進んでいくのが認知症で、進み方は病気の質や人によって異なり、ゆるやかに機能低下していく人もいれば急激に進むケースもあります。

治療としての、神経の伝わり方を良くする薬

  • アリセプト
  • レミニール
  • リバスタッチパッチ
  • メマリー
  • (複数種ある)

落ち着いてもらうための安定剤

  • 漢方薬=抑肝散(よくかんさん)

残念ながら、根治する方法はまだ確立されていません。なお、くも膜下出血や硬膜下血腫、あるいは正常圧水頭症などによって認知症と同じ症状が出ることがありますが、これは外科的な治療によって取り除く事ができる1時的なものにすぎません。お年寄りの認知症とは、異なるものです。

認知症とは

茶色の図書館

実際には様々な検査を経て結論が出されることになりますが、おもに次の3つの条件を満たすと認知症と診断されます。

  • ①記憶障害がある(物忘れ)
  • ②失語、失認、失書、失行、実行機能障害、社会的認知障害
    • (今までわかっていたことが、わからなくなる。出来たことが、出来なくなる。相手や周りの人の気持ちがわからなくなる。)
  • ③前記の①に加え②のどれかがあり、日常生活に支障がでている

①と②は医学的には「中核症状」と呼ばれ、脳のどこに障害が起こっているかによって出方が変わります。(これは治りません)

「周辺症状」は、認知症の人を取り巻く環境や、関わる人の対応などに影響されてでる症状です。(これは薬で和らげたり、直接的に介護によって抑えられたりできます)

これらはかつては「問題行動」と呼ばれていましたが、近年では「BPSD」という言葉が使われるようになってきました。「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」「認知症に伴う行動、心理状態」という英語の頭文字をとった略語です。

おもな「BPCD」

  • 不安、うつ症状、幻覚、妄想などの心理症状
  • 興奮、暴力、収集癖、過食、徘徊、無反応などの行動異常

これらの症状は誰にでも起こるとは限りませんが、認知症が進むにつれて現れやすくなり、環境の変化や不適切な対応によって強く出ることが知られています。

認知症の「中核症状」とは「脳の障害」です

記憶障害

認知症の記憶障害は、私たちが日常経験する物忘れとは異なり、記憶全体がなくなってしまう点に特徴があります。

【忘れ方の違い】(健常な高齢者 ≠ 認知症の高齢者)

  • 体験したことの1部を忘れる ≠ 体験したこと自体を忘れる
  • 大きくは進展しない ≠ だんだん進行する
  • 忘れやすくなったと自覚している ≠ 「忘れたこと」自体を忘れる
  • 判断力は保たれている ≠ 判断力は損なわれていく
  • 日常生活に影響しない ≠ 日常生活に支障が出てくる
失語

覚えている言葉の数が減り、言葉が出て来なくなる状態です。認知症が進むと自分が何を言おうとしたのかもわからなくなってしまいます。

相手の言うことも理解できなくなり認知症の人が不穏になる原因となります。
(不穏=ふおん=イライラしておだやかでないこと)

失認

視力に特段の異常がないのに、物、人の顔などがわからなくなることです。認知症が重症化すると、物を見たり触ったりしても、それが何なのか適切に理解できなくなります。

この結果、たとえばビン入りのドレッシングを化粧水と間違えて顔に塗るなどの、周囲からは理解不能な行動に出ることがあります。

失見当

場所を認識する力が失われていき、自宅にいてもトイレの場所がわからなくなってしまったり、通いなれた道で迷ったりといったことが起こります。

失書

目や手に異常がないのに、文字が書けなくなる状態です。比較的早い段階から漢字を忘れたり、文字が書けなくなることが多いのですが、逆に読む能力は後々まで残ることが多いのも特徴です。

失行

手足に異常がないのに、正しい動作ができないことです。わかりやすい例をあげると、服の裏表や着る順番、正しい着方がわからなくなります。

ズボンを頭にかぶってしまったり、脱ぎ着が出来なくなるといった状態となります。認知症の中期以降に出てきます。

実行機能障害

計画を立てたり順序よく物事を進めるのが難しくなります。レシピを見ながら料理を作る、地図を見ながら旅行の計画を立てるなど、段取りができなくなる状態と考えてください。

社会的認知障害

社会的規範やルール、まわりの人の気持ちが理解できずに勝手な行動に結びついてしまうことです。

代表的な認知症とは

図書館

アルツハイマー型認知症

脳内にアミロイドβ(ベーター)と呼ばれる以上なタンパク質が沈着することによって起こります。
このタンパク質の毒性は、タウというタンパク質を変性させて、正常な神経細胞を脱落させ萎縮させます。

進行するにつれ脳全体が縮んでいき、結果として患者は様々な症状(中核症状、周辺症状)を呈するようになります。男性に比べ、女性の高齢者のほうが若干多いとされている病気です。

ステージと症状

【初期】

無気力やうつ状態から始まることが多く、物忘れが出てきますが、まだ日常生活に大きな支障をきたすほどではありません。そのため初期は、認知症かどうか見分けにくいことが多くなります。MCIと重なる時期です。(MCI=軽度認知障害=認知症予備軍)

【中期】

日時や場所がわからなくなり、玄関で排泄するなどの行動が見られるようになります。「財布を盗られた」「ご飯を食べていない」「家から追い出される」などといった被害妄想が出ることも多くなります。

人によっては、いない人がいるようなことを言ったり(幻の居人)、幻覚を経験することもあります。
また徘徊が始まるのもこの時期で、警察に保護されて周囲がその異常に気付くケースもあります。

【後期】

理解力や判断力がさらに低下し、食器の使い方や食べる動作まで忘れてしまうため、自力では食事ができなくなる人もいます。

食べ物を飲み込むことが困難になり、誤嚥性肺炎を起こしやすくなるのもこの時期です。感情の起伏が非常に乏しくなり、体は硬直し、やがて寝たきりになります。

脳血管性認知症

脳卒中に伴って起こる認知症です。

脳卒中には脳内の血管が詰まる脳梗塞、血管がやぶれて出血する脳出血、とがあります。病気によって血流が行き届かなくなった部分の脳細胞がダメージを受けるため、認知症が起こります。

脳卒中は再発することが珍しくありません。そのたびに脳へのダメージが積み重なり、機能がガクンと低下します。(まるで、階段を降りるようにガクンと機能が低下します)階段状にイメージできます。

60~70代の男性に多い病気で、梗塞や出血が起った場所やこの大きさによって症状の出方が違ってきます。たとえば、脳の言語をつかさどる部分に障害が起こると、失語が出るという具合です。

ステージと症状

【初期】

脳の神経細胞がダメージを受け、注意力、理解力が乏しくなります。生活においても、理解できることと理解できないことが出てきます。その差がはっきりしているので、かつては「まだらボケ」とも言われていました。

物事に取り組む意欲が低下し、感情の起伏は激しくなります。夜間の不眠、不穏(ふおん)などによって生活が昼夜逆転になってしまうこともあります。

【中期】

脳血管のトラブルを繰り返すたびに機能が低下していきますが、それにより理解できないことが多くなり、生活上の支障が増えていきます。

体のマヒや拘縮(こうしゅく=筋肉や関節が固くなって動かなくなること)が強くなるため、尿道や便意がわからなくなり失禁が見られるようになります。

【後期】

寝たきり状態になり、誤嚥性肺炎を起こすなど、アルツハイマー型認知症の後期と同じような状態になります。介護面では、オムツの使用、訪問入浴、訪問看護、往診などの対応が必要となります。

レビー小体型認知症(DLB)

脳の中にレビー小体と呼ばれる異常なタンパク質がたまる病気です。脳幹部にだけたまった病気がパーキンソン病です。それが大脳全体に広がっていきます。その結果、脳の諸活動に障害がでるのが、レビー小体型認知と考えられています。

このタイプには、幻視(あるはずのないものを見る)のような特徴的な症状が見られます。「意識の変動」といって、理解力、判断力が比較的しっかりしている時と、しっかりしていない時があり、両者を繰り返しながら進行していく点にも特徴があります。

また、レビー小体型認知症が運動機能を司る脳幹部にもたまっているので、歩行など体の動きに支障が出ます。これをパーキンソニズムと言い、パーキンソン病と共通する症状が現れます。

  • 固縮(筋肉がこわばる)
  • 無道(動作が遅くなる、歩きにくくなる)
  • 振戦(手足のふるえ)
ステージと症状

【初期】

パーキンソニズムが見られる時と見られない時があります。また、うつ病で発症することもあります。この頃は自分が物忘れをすることを自覚できますが、幻視が現れます。

いるはずのない虫が「部屋中にいる」と言い出したり、遠くに住んでいるはずの子どもが「帰ってきている」と言ったり、1人で話し込んでいることもあります。

【中期】

パーキンソニズムのため、体の硬直が見られるようになります。幻視や妄想も頻繁になり、現実離れした話が増えてきます。しかし、記憶が保てている時がまだあるため、介護者が振り回される場面も少なくありません。

【後期】

体は硬直し、寝たきり状態になります。えんげ障害もでて、アルツハイマー型認知症と同様になっていきます。頻繁におこる妄想に悩まされ、恐怖感から声を上げてしまうケースもあります。

前頭側頭型認知症

萎縮が前頭葉と側頭葉に強く出るタイプの認知症を「前頭側頭型認知症」と呼びます。その中でもとくに患者数が多く、ピック球という異常構造物の蓄積が原因となって引き起こされるのが「ピック病」(あるいはピック型認知症)です。

前頭葉は脳の司令塔にあたる部分で理性を司り、側頭葉は言語などを司っています。そうした部分に障害が起きるため、「自己中心的な言動をする」「反社会的な行動に出る」「会話がかみ合わず、コミュニケーションが上手くとれない」など、ほかのタイプにはあまり見られない、性格変化が著しい特異な症状が出ます。

多くの場合、40~60代の初老期に発症し、80代での発症はマレです。

ステージと症状

【初期】

記憶力や体にはほとんど異常がでません。日常生活にも支障はありませんが、患者の言動が社会常識を逸脱するようになります。結果、周囲には性格が変わったかのように見えてしまいます。

【中期】

会話のピントがずれ、同じことを繰り返し言ったり、同じものだけを食べるなどの行動(常同行動)が多くなります。人柄が変わり、周囲の迷惑を顧みない反社会的な行動が増え、日常生活に支障が出るようになります。

【後期】

体の硬直、寝たきり、奇声などの症状が出始め、急速に進行していきます。それでも常同行動や反社会的行動が出る場合があるため、介護者は目が離せません。

在宅での介護が厳しくなり、介護施設でも看きれなくなった結果、入院するケースも多くなります。経過は長く、20年というケースもマレではありません。

若年性認知症

65歳以前に発症する認知症は、原因疾患の種類にかかわらず「若年性」と呼ばれます。

アルツハイマー型やレビー小体型といった、ここにあげた各種に加えて、事故の後遺症として発症するケースもあり多種多様です。

ただ、若年性認知症で最も多い病気は「脳血管性認知症」、次いで「アルツハイマー病」です。若年性認知症の特徴は「急速、過激」という点です。

患者の認知機能は急激に衰え、2~3年で別人のように変化してしまうことがあります。
若くして発症するだけに、初期は本人の苦悩も深く、かつ体力は残されているためBPSDは強く出ます。

(かつては「問題行動」と呼ばれていましたが、近年では「BPSD」
という言葉が使われるようになってきました。「Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia」「認知症に伴う行動、心理状態」という英語の頭文字をとった略語です。)介護者が女性の場合はとりわけ苦労することが多いようです。

最後に

家族介護

最後までお読みいただきありがとうございます。

「認知症」は脳の病気です。脳の細胞が徐々に破壊され、最後には寝たきりになるといわれている病気です。常識では考えられないような「問題行動」が発症し、介護する側、たとえば家庭では、嫁や子ども、夫婦、介護職ではヘルパーや施設職員など実際に日常生活を看る人たちにとっては、一筋縄ではいかない困難な病気です。

とくに「認知症の人の介護」は地道な毎日の積み重ねであり、地味に忍耐を必要とします。もちろん体力も要ります。

疑問を持ち、学習しながら実践し、また疑問を持ち、学習、実践の繰り返しです。何の見返りもありません。病人を看取るだけの仕事です。ですが、その途中にある、笑顔や感謝の言葉に力を頂きます。
疲れても「ありがとう」の一言でまた歩き続けることができます。何より大変な認知症の介護のお役に立てば幸いです。

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