認知症はある日突然かかるのではなく、長い年月をかけてじわじわと進行していく生活習慣病なのです。認知症を防ぐ食事術があり、それを続けて行くコツがあります。自宅以外でも、つまり仕事で外食をする時に役立つポイントやお店選び、安心して注文できるメニュー、あるいは、コンビニでのランチの選び方もご紹介しています。
著者 江部康二(えべ こうじ)
1950年、京都府生まれ。京都市右京区・高雄病院理事長。数多くの臨床活動の中からダイエット、糖尿病克服に画期的な効果がある「糖質制限食」の体系を確立。ブログ「ドクター江部の糖尿病徒然日記」(http://koujiebe.blog95.fc2.com/)にて糖尿病や糖質制限にまつわる情報を日々発信している。『「糖質オフ!」健康法 主食を抜けば生活習慣病は防げる!』(PHP文庫)、『内臓脂肪がストンと落ちる食事術』(ダイヤモンド社)など、多数の著書がある。
名医が考えた認知症にならない最強の食事術(2020年6月24日 第1刷発行)
(解説、引用しています)
外食時に役立つ食事術 小ワザ編
安心&満足の外食を伝授
自宅だけではなく、仕事を持つ方の「外食」も、「糖質制限食」のサポートがあります。
外食をする際に役立つポイントやお店選び、安心してオーダーできるメニューなどについてお話していきます。また、コンビニランチを買うときの注意点などもお伝えします。
食事から「糖質」を抜こうとしたときに気づかされるのが、「世の中にはこんなにも糖質があふれているのか・・・」ということです。外食ではなおさらです。しかし、糖質を避けながら、満足の高い外食を摂ることは、それほで難しいことではありません。
和食は危険がいっぱい!?

味付けのために糖質がたっぷり
「和食」には健康的なイメージがありますが、「寿司」はNGです。
定食なら、魚の定食、焼き魚定食や刺身定食。肉なら、鶏肉の竜田揚げ定食や豚のしょうが焼き定食、しゃぶしゃぶ定食、などをチョイスするようにしてください。ご飯は摂らないか、摂ったとしてもお茶碗半分くらいに。
高級コースの味付けに要注意
高級料亭も糖質制限食には鬼門となります。
味付けに凝っているので、砂糖、糖分を使うことが多いためです。先付けに始まり、煮物、蒸し物、酢の物、和え物、焼き物、汁物、ご飯。このうち安心して食べられるのは、焼き物と汁物だけ。それ以外は糖質(砂糖、ミリン)がたくさん含まれています。認知症リスクがたっぷりです。
フレンチのコースなどは料理に砂糖を使用していないので、パンやデザートのケーキに気を付ければ、あとは大丈夫です。
焼き鳥店と居酒屋は安心して利用できる

街のどこにでもある「理想郷」
糖質制限食を実践する人達にとって「理想郷」とのいえる外食先は、焼き鳥店と居酒屋です。
ネギまや軟骨、つくね、レバー、手羽先など、食べ放題。ただし、味付けは「塩」を注文してください。野菜類もシイタケやシシトウ、玉ねぎもどんどん食べられ、エダマメや冷奴、オニオンスライスなども安心できます。
居酒屋ではメニューをよく考えて
オーダーで気を付けるポイントは、フライドポテトやコロッケ、肉じゃが、ポテトサラダなどイモ類を使ったメニューです。ほかには、魚の煮つけ(ミリンや砂糖たっぷりです)や衣をたっぷり使った天ぷら、ギョウザやシューマイなどは避けてください。
ご飯やめん類は最初から除外して、「仕上げにお茶漬け」はNG。(スープや汁物だけにしてください。)お酒は、ビールや日本酒のような醸造酒は避け、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒を。醸造酒には糖分が多く含まれ、血糖値も上げやすいのです。
和食よりも洋食のほうが選択肢が広い

フレンチもイタリアンもどんどん食べて!
認知症を防ぐ食事術では、これらを大いに活用して大丈夫です。
フランス料理はバターなどの乳製品を使うため、カロリーを気にする人もいるかもしれませんが、糖質そのものは少ないので、気にする必要はまったくありません。
ワインも糖質が多い甘口のワイン以外なら飲んでも大丈夫。赤ワインには抗酸化作用をもつポリフェノールが豊富なので、とくにおすすめします。
イタリア料理は、パスタやピザ、リゾットなど糖質をたっぷり含むメニューを避ければ問題ありません。やはり、甘口の白ワインはさけ、赤ワインで。白ワインを飲むなら、辛口のきりっとしたのを飲みましょう。
地中海食もお勧めです!

地中海食は世界的に「健康にいい食事」といて高い評価を受けています。
オリーブオイルがたっぷりで地中海食を日常的に食べている人が心筋梗塞になることは少ないと言われています。海の幸もふんだんに使うのでヘルシー。良質な油と食材で、認知症予防に役立ててください。
気軽に入れる、ファミリーレストランでは、カレーライスやオムライス、クリームシチュー、グラタン、ドリアなど糖質の多いメニューはパスするようにしてください。
バイキングでは、多種類を好きなだけ!

相手に気兼ねすることなく楽しめる!!
最近では「ビュッフェ」と呼ばれることが多くなっています。
バイキングでチョイスすべきでないポイントは、ライス類やパスタ類、パン類、もちろんスウィーツ類です。そして、味付けにも注意が必要。ケチャップソース、ドミグラスソース、甘酢あんかけなど、甘い味付けは、糖質制限食にはNGです。
和風ドレッシングは中身に注意して
おすすめは、フレンチドレッシング、サウザンアイランドドレッシング、マヨネーズ、オリーブオイルです。「低カロリー」をうたった、青じそドレッシングや和風ドレッシングは避けましょう。オイルを少なくした分、糖質であじを整えています。
スープに関しては、ポタージュや中華スープ、卵スープのように「トロミ」がついたものは、デンプン(糖質)が多いので避けましょう。
ドリンクバーがある場合、飲んでいいのは、お茶かコーヒー、紅茶。砂糖はNGです。ジュース類は絶対NG。しかし、糖質ゼロのものがあれば、大丈夫です。
おかずが選べる定食屋はランチの味方!

ひとりでもみんなで行っても大丈夫
好きなおかずをチョイスした分だけお金を払うタイプの定食屋があります。料理の入った小皿や小鉢がショーケースに並んでいて、それをお盆にのせていくというスタイルです。
こうしたお店もまた糖質制限食に便利です。飯類や糖質が多いおかずは簡単にスルーできます。おかずの種類も多く、作り置きしているので、忙しいときには、すぐに食べれて、なお便利です。
こうした定食屋を知っていると、糖質制限をしていない人たちとも気兼ねなく入ることができます。
付き合いを損ねてまでがんばらない
糖質制限をしていてややネックになるのが、糖質制限をしていない人たちとの外食です。たとえば、ラーメン、うどん・そば、カレーショップなど、糖質の多いお店に誘われた場合、素直に同行しづらくなるわけです。
「寿司でも食べにいこうか」という流れになった時に、「寿司なんて食べたら、将来大変なことになるんだよ!」などと言ってしまうと、空気が凍り付くことになりかねません。
糖質制限は大切なのですが、人間関係を損ねてしまうまでに厳格に守ろうとすると、それはそれで問題が生じます。ときには「よし、今日は糖質制限を解除!」と肩の力を抜くくらいの気軽さも必要です。
糖質を摂ることになってしまっても、その前後で対策をすれば、影響を少なくすることもできます。
サラシアを摂取前に食べ、食後に歩く、軽い運動

糖質の吸収を穏やかにする植物
認知症を防ぐ食事術を続けている人にとって、悩みのタネが「断り切れない会食の場で糖質が出た時」です。とくに会社勤めの人なら、接待がそうですし、親戚の集まりや、友人、知人との食事会など様々。
「糖質から逃げられない状況」をむかえた時の対処法は、食前に「サラシア」由来の機能性食品を摂っておくことです。サラシアとは、植物の1種で、糖質の吸収を穏やかにする成分が含まれています。
糖質の多い食事を食べる前に「サラシア」を摂っておけば、少しはマシになると考えていいでしょう。安心できるのは「トクホ」(特定保健用食品)の表示つき。トクホは消費者庁が許可した商品にしか表示できないので安心材料の1つにはなります。
日常生活のなかにも運動する機会は多い
とはいえ、「サラシア」だけで安心してはいけません。食後はなるべく体を動かすようにしましょう。激しい運動は必要ではなく、30分~1時間ほど歩くだけで充分です。
歩くことで筋肉が収縮して細胞内の糖受容体が表面に移行し、その分ブドウ糖の吸収率が高まります。筋肉に取り込まれる量が多ければ、「インスリンの追加分泌」もそれだけ抑えられるということです。
「そんなに歩けない」という人は、せめて階段を使うようにするなど、少しでも体を動かすことを心がけましょう。現代人はあまりにも体を甘やかし過ぎだということは、繰り返し強調しておきたいところです。普段から、こまめに体を動かすクセ、習慣はぜひつけておいてください。
運動でなくても、家事や買い物、通勤などで体を動かす機会はたくさんあります。「老化は足から」という言葉もあるように、日頃から歩いていないと、足の筋肉が衰え、転倒もしやすくなります。転倒で骨折、そして寝たきりになり、その先には認知症・・・と言うケースは特別な例ではありません。
糖質を摂った時は、より意識して体を動かしたいものです。
食べずに残すという手段もあり
「ご飯はいりません」はキッパリと
糖質制限食が市民権を得るにつれて、外食先で「ご飯はいりません」と言っても驚かれることが少なくなりました。最近では、糖質制限している人たちをターゲットとしたメニューが
増えてきていることも実感しています。
外食先で「ご飯はいりません」とハッキリ断ることは大切です。残すのに罪悪感を感じるようなら、最初に伝えておきましょう。
そもそも糖質の少ない品を選ぶ
ご飯は断ることが出来たとしても、それ以外に糖質を含むおかずがでてきたらどうすればいいでしょうか?答えは「食べずに残す」が正解です。頼んだわけでもないのに出されたのですから、不可抗力と考えていいでしょう。
家族で一緒にお好み焼き店に行っても、小麦粉を使ったお好み焼きは頼まず、シーセージや野菜炒め、オムレツ、とん平焼きなどを注文します。これもありなのです。実際、行きつけのお店も理解してくれています。
ファストフードはサイドメニューを駆使

意外に使えるハンバーガーショップ
健康意識の高い人はあまり行きませんが、ファストフード店手早く食事をするには便利です。
ポイントは、フライドチキンやナゲットを使ったメニューをオーダー。マクドナルドやモスバーガー、ケンタッキー・フライド・チキンなど、有名店舗ではどこでもあります。それぞれの公式サイトにはメニューそれぞれに栄養成分も表記されています。
フライドポテトの代わりに頼みたいのはサラダです。糖質の多いコーンサラダはNG。ジュースは糖質ゼロのコーラはOKですが、それ以外はNG。
ブラックコーヒーかストレート紅茶、ウーロン茶、ミネラルウォーターが正解です。
牛丼店でもご飯抜きの食事ができる
牛丼店も使い勝手のいいファストフードです。
ご飯は抜いて、メインのおかずは具材だけを皿にのせた「牛皿」を。焼きサケや、ゆでたまご、冷奴、野菜サラダなど、サイドメニューから選ぶようにしましょう。
すき屋の「牛丼ライト」ご飯のかわりに「豆腐」が使われている糖質制限メニューが、おすすめです。
使い勝手のいいコンビニ、スーパー
低糖質の商品が思いのほか充実
今やコンビニ食は健康を全面に打ち出している商品を多数そろえるようになっています。糖質制限している人たちのニーズにも、しっかり応えていて、安心して口にできる商品が充実しています。
レジ横のショーケースがおすすめです。メインのおかずになるものをしては「ホットスナック」です。レジ横のショーケースには揚げ物類が並んでいます。あそこには低糖質で高たんぱくの商品があるのです。焼き鳥やフランクフルトです、安心して食べることができます。唐揚げは衣が多く、避けたほうがいいでしょう。
お惣菜コーナーもおすすめです。サバの塩焼き、豚のしょうが焼き、サラダチキンなど。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなど、公式サイトに栄養成分がありますので、参考にしてください。
おでんは甘い汁を飲まないように
サラダも充実しています。ツナサラダ、チキンサラダ、豚しゃぶサラダなど低糖質です。ドレッシングは、フレンチドレッシング、サウザンアイランドドレッシング、マヨネーズがベストです。ポテトサラダ、マカロニサラダはNGです。
その他、ゆで卵、冷奴、漬物、納豆など、カップ入りのインスタント味噌汁もおすすめです。
おでんもおすすめ、低糖質な具は、卵にダイコン、牛筋、タコ、厚揚げなどはOK。ジャガイモ、コンブ、餅入り巾着はNG。また汁は飲まないようにしましょう。
コンビニより、スーパーが値段が安い場合があるので、賢く使い分けましょう。お惣菜専門店も利用するのもOKです。
低糖質メニュー導入の外食店が増加中

丼物やめん類、なんとカレーライスまで!
外食業界では低糖質メニューを導入する店舗が増えてきました。これも糖質制限食が一般的に認知されるようになったことの現れと言えるでしょう。具体的な店名とメニューの紹介をしてきます。
- 牛丼チェーン店の低糖質メニュー
- すき屋・・・「牛丼ライト」ご飯の代わりに豆腐を使ったメニュー
- (糖質のタレとポン酢はかけないようにオーダー)
- 吉野家・・・「ライザップ牛サラダ」牛肉に加えて鶏肉やブロッコリー、
- 半熟卵をのせたサラダ「ライザップ牛サラダエビアボカド」
低糖質の麺メニューが選べる
ファミリーレストランの低糖質メニュー
- ジョナサン・・・「1日分の野菜が摂れる!ベジタンメン」「酸辣湯麺(スーラータン麺)」
- これらはいずれも「糖質0麺」に変更することができます。
- 糖質0麺とはこんにゃく粉を使った麺。
- また、ランチに関してもライスの代わりに低糖質のソイブレッド(パン)やセットサラダを選ぶことができます。
- ロイヤルホスト・・・「低糖質パン」
- ガスト・・・糖質控えめのホウレンソウ麺を使った麺メニュー
- 期間限定の「海老と山芋オクラのねばとろサラダ麺」
- 「1日分の野菜のべジ塩タンメン」
- リンガーハット(長崎チャンポンの専門チェーン)・・・麺が入っていない「野菜たっぷり食べるスープ」
- CoCo壱番屋・・・「低糖質カレー」ライスの代わりにカリフラワーライス
著者の糖質制限食とは?

江部ドクター(著者)は毎日、糖質制限食を摂っています。朝はコーヒーと少しの生クリームだけです。とある日の昼食と夕食をご紹介しましょう。
昼食は江部ドクターの職場の食堂で、鶏肉の照り焼きとキャベツの千切り、白身魚の煮つけとホウレンソウのおひたし、タコとキュウリの酢の物、ゴボウと春野菜の煮もの。糖質は10gです。
夕食は「和食さと」で「さとしゃぶ食べ放題」の豚肉コースを注文。ダシは糖質を含まないコンブダシとかつおダシを選び、豚ロースや豚バラ、野菜、豆腐を食べました。ほかにカキフライや鶏唐揚げ、焼き鳥(塩)の軟骨とモモなどを単品で頼みました。カキフライや唐揚げは小麦粉の衣がついていますが、それぞれ2個と3個なので許容範囲内。
お腹いっぱい食べて満足感もひとしおで、血糖値も30㎎しか上昇しませんでした。
まとめ
認知症を防ぐ食事術の正解は、「いかに糖質を体のなかに入れないか」です。
3大栄養素の「糖質」だけが血糖値を上昇させます
- 外食でこそ、糖質制限食を賢く選ぶことです。
- 定食はご飯やめん類、パン類を食べないか、減らす。
- 「寿司」はNG。
- 焼き鳥店、居酒屋、バイキング(ビュッフェ)、
- おかずが選べる定食屋、ファミレス、コンビニ、スーパーで、「低糖食」を賢く見極める。
- ファストフードは「サイドメニュー」から「低糖質」を見極める。
- 炭水化物は摂らないで最初から「ご飯はいりません」とキッパリ言う。
- しかし、人間関係を壊してまでやらなくてよい、臨機応変に。
- 糖質を摂らざるを得ないときは、食前に「サラシア」を食べて、食後に軽い「運動」をする。
- (糖の吸収がおだやかになる)
- サラシア由来の機能性食品は、トクホ(特定保健用食品)の表示のあるものが安心。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。次回は、運動とマインドセット編をお送りいたします。認知症は生活習慣病の1つです。この生活習慣病に有効で体に優しい食事術には「糖質制限食」があります。体は食べたものでできています。毎日の食生活のお役に立てれば幸いです。
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